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法規制面から考える、日本の新しいビジネスの行方

April 20, 2017

ドローン空撮や民泊など、新しいビジネスが国内に続々と生まれつつあります。しかし、これらは新しいビジネスが故に、安全面や治安などに関わる問題をはらんでいるという現状も無視できません。今回は黒沢レオ行政書士ネットワーク代表の黒沢怜央さんをゲストに迎え、こうした新しいビジネスと法規制にまつわるお話をお聞きしました。

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柳瀬:黒沢さんは今、ドローン民泊といったアメリカを発信地とする新しいベンチャーのマーケット、案外名前は聞くけれど、まだまだサービスそのものは知られていない、そんな日本ではなかなか体験しないようなサービスを、国内で普及させるにはどうすればいいのか。法的な側面から支援をしているとお聞きしました。そうした活動をはじめられたきっかけから教えていただけますか。

黒沢:2015年に航空法の改正によってドローンの法規制が変わり、ドローン飛行には原則許可が必要ということになりました。そのタイミングで、ドローンのベンチャー企業の方を紹介いただいて、その方とお話をするようになってから、ベンチャーサポートをされる方とご一緒する機会が多くなったことが、活動をはじめたきっかけです。

柳瀬:ドローンは2015年まではどのような扱いだったのでしょうか。

黒沢:ラジコンと同じような、特に飛行には許可のいらないものの扱いでした。しかし、首相官邸に落ちた事件がありましたよね。そこから日本も許可制にしなければならないということになりました。

柳瀬:規制されることで、どのようなデメリットや弊害があるのでしょうか。

黒沢:商業用として訓練されたパイロットの方もいらっしゃったわけですが、素人が飛ばすことと同義に扱われてしまったことは、パイロットの方にとっても厳しい現状となってしまったと思われます。

柳瀬:規制が生まれたことで痛手を被った、ビジネスに何らかの影響のあった例はありますか。

黒沢:プロカメラマンや空撮をしていらっしゃった方でしょう。許可をとるのにはマニュアルを作ったりと何かと大変です。おまけに河川や海岸で飛ばしたりと場所によっては別の法規制にもかかってくるケースもあります。航空局とはまた別の国交省案件になりますから。

柳瀬:実際に仕事に支障を来している方にはどのようにアドバイスをされていますか?

黒沢:まずやはり、しっかり許可を取らざるを得ないとご説明します。法手続きに必要なものは何かをきちんと説明させていただくんです。とはいえ、申請して一ヶ月ほど許可が必要なケースもあるのですが......。

柳瀬:先日長野県でヘリコプターが墜落した事件がありました。そうしたケースですと、ドローンを飛ばすことができればすぐに現地の様子を撮影できたり、生存者がいれば支援物資を運ぶこともできますよね。こういった時も、原則としてはいちいち申請が必要なのでしょうか。

黒沢:こうした場合は一年間の許可というものがとれたり、緊急時の特例もある。ケースバイケースということです。その基準はガイドラインで決められている部分も多々ありますが、まだ不明瞭な点も多い。どんなケースでも、とにかくいちいち確認しないといけないというのは確かです。

柳瀬:ドローンと言えば、今後は将来的にアマゾンや楽天が将来的に物流の現場でも活躍が期待されています。国内でドローンのサービスを展開しようという流れがある中で、現状の法律面や制度の面から、どのような整備が必要だと思われますか。

黒沢:日本の航空法の改正は世界的にも評価が高いんです。日本では「この飛ばし方をしないとドローンを使ってはいけない」という一律での規制ではなく、「安全性さえ確保できていれば許可を出します」というヨーロッパ型のスタイルを採用しています。ですから、我々の側で書類上でその安全性を明記できれば許可はもらえるのです。つまり、産業の発展という意味ではさまざまな利用方法が可能性として考えられます。ただ、去年一年間だけでも申請が1万件も来ているという状況があります。国土交通省としてもパンク状態なんです。なので、マニュアルを単純化したり、テンプレート化してしまっているところがある。安全性をちゃんと担保しなければならないところを、件数が増えたことでチェックがおざなりになってしまうと、まずいですよね。

柳瀬:場合によっては大きな事故になってしまうケースも考えられますもんね。

黒沢:安全に飛行させることが何よりも重要です。

柳瀬:民泊についてもお聞かせください。このビジネスも日本でちらほら動きが見受けられつつあります。民泊については法律上ではどのような問題を現状抱えているのか、また黒沢さんは行政書士としてどのようなお仕事をされているのか教えてください。

黒沢:マンションの一室を利用して投資の目的でビジネスをされたり、民泊と言ってもさまざまな形態があります。ホテルや旅館などのように旅館業の許可をきちんと取ってビジネスをされている方もいらっしゃいますが、最近メディアで取り上げられるのは違法のものが多い。つまり、玉石混合なんです。適法でビジネスをするためには、きちんと許可を取ればいいのです。ですからその許可を取る支援をしていくのが我々のお仕事になります。

柳瀬:民泊は比較的参入障壁も低いビジネスかと思います。それ故に、トラブルも多いと思うのですが、具体的にどのようなポイントが問題になりがちなのでしょうか。

黒沢:共同住宅ですと付近に住民の方がいらっしゃいますから、ゴミの出し方や鍵の受け渡しでトラブルになるケースがあります。あとは日本とは価値観の違う外国人の宿泊客がいらっしゃいますからマナーの問題もあります。ですから、宿泊客に対してきちんと説明をするというのが大事になってくるんです。先日福岡に行った際、宿泊客に民泊用の部屋の状態を説明したり、鍵を受け渡すといった、宿泊客の窓口のようなビジネスをされている方とお会いしました。これは、いわば民泊のフロントのような存在でしょう。先ほど申し上げたような問題がある以上、こうしたサービスの存在はこれからも必要になってくるように思います。

柳瀬:ドローンや民泊、またUberのようなサービスも、アメリカを筆頭にアジアでも普及していますが、日本はどうしてなかなか普及しないのでしょうか。

黒沢:日本では「この場所でこの人物がやるから、それに許可を出します」という立て付けになっているケースがほとんどです。シェアリングエコノミーや遊休資産の活用ということですと、例えば場所が移動するとか、いろんな人が同じ施設を利用するということになります。人物や場所が特定できないんですよね。ですから、もともとそういうビジネスが生まれることを想定していなかったんです。よって、どんなビジネスもグレー、違法になってしまうんです。

柳瀬:懸念点もある一方、2020年に向けて国内観光業は宿が足りない状況が生まれています。宿や足を増やす必要がある現状で、法規制はボトルネックになったりしないのでしょうか。

黒沢:やはりそれは考えられます。なので、今民泊新法がうまれているところですが、その法律自体もどうなるか分かりません。

柳瀬:とはいえ、せっかくのインバウンドマーケットのチャンスを逃しかねませんよね。どうしたらいいのでしょう。

黒沢:企業支援という点では、規制緩和をするというのがひとつの道ではありますが、規制緩和をする時にも問題があります。行政側は行政側でいろんな実務を担当していますから、事例に基づいた意見があるわけです。単純に規制緩和をすればいいというわけではなく、行政側の言い分も入れながら進めなければ、そこは本来の法制度の趣旨が埋没してしまうことがあるかと思います。

柳瀬:最後に新しいベンチャーを行政書士の立場から支援するポイントがあれば教えてください。

黒沢:僕らもきちんと、新しいビジネスの存在を理解をしなければなりません。僕らの業界はそういうものに疎い業界なんです。今揺れ動いているそうしたベンチャービジネスの現状を認識した上で、中にはもちろん理にかなったビジネスもある訳ですから、我々が規制行政になってしまうのではなく、一緒になって行政とのコミュニケーションをはかれるような存在になるべきだと思います。

■黒沢レオ行政書士事務所
http://kurosawareo.jp/