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LGBTの権利「男女問題の延長線上にある」 社会心理学者 川島洋(真奈美)氏

September 29, 2017

 トランスジェンダーであり社会心理学者として、LGBTの研究や啓蒙活動に取り組む大月短期大学の川島洋氏とLGBTにまつわる課題とその解決の糸口を探る本連載。

 今回は東京五輪を前に企業のLGBT施策がこれまで以上に求められている中、企業や個人、社会の課題とは何かを聞いた。

――現在のLGBTの企業の対応をどう見るか。

 中小企業は基本的なトイレといった設備や理解を呼び掛ける教育が不十分ですが、大手に関してはかなり進んできていますね。次のフェーズとして個人の意識改革ではないでしょうか。会社自体は対応していても部署ごとの個人個人の意識や理解度が問題になってきます。また職種でも差が大きい。中でも性別が心と体が一致しないトランスジェンダーは、営業職は現場の判断で取引先の印象をどうしても考慮に入れてしまう恐れがあります。コミュニケーション能力が高いのに外回りをさせてもらえないケースもあります。見えない理不尽な区別があり、意識を変えていく必要があるのでは。

――トランスジェンダーと同性愛者が抱えている問題の違いとは?

 同性愛者は言わなければわからない部分があります。採用でも見た目で落とされることはありません。まだまだパートナー関連の保険適用などの権利が使えない会社が多いですが、「認めますよ」と言われても、カミングアウトができない。理解してもらえことが難しいからです。権利があっても行使できないし、誰にも相談できない。窓口があっても難しいのが現状です。トランスジェンダーは、見た目から差別されてしまう。リクル―トスーツから差別的。認める企業も増えましたが、まだまだ一握り。対応がしっかりした大手に入れる人ばかりではない。ゲイやレズビアンより平均収入が低くなりがちで、性別違和の診療は保険適用外とくれば貧困につながってしまう。しかもバイトしたいといっても面接で嫌われる人が多いんです。

――当事者であり研究者として感じる課題はあるのか。

 私のようなトランスジェンダーの場合、職場での服装について「我慢できないのか」「そのように振舞えないのか」という人がいるんです。皆さん「自分の性とは違う恰好で歩ける?」「スカートしてメイクして歩ける?」それって度胸がいることですよね。それと同じことをさも当たり前に言っている人がいます。男が男である意識、女が女である意識が普通だと思っているので、自分で差別していないつもりでも無意識に差別してしまっているんです。その背後には、企業が多様性の中にあっても、女は女、男は男らしい服装や髪型を理不尽に求める校則が残っていることもわかるように、やはり根深い日本的性役割観の弊害が大きいのでしょう。学校教育からの啓蒙も必要ではないでしょうか。

――今後、働きやすい環境に必要なものは?

 短期のスパンでいうとやはりトイレや更衣室でしょうね。多目的トイレみたいに、どっちでもいいものを作ってもいい。それから上司向けの社員教育講習会を開くことも大事。本当の意味で理解しなくてもいい。"そういうもの"として理解してもらえればいい。そして、男女差別を改めて考えなおすこと。このLGBTの問題は男女の問題と同義ともいえるんです。仕事で勝手に「女性は〇〇だから〇〇できない」と判断して活躍できないでいる女性は多い。「女はこうあるべきだ」などの固定観念は差別を生みます。ましてや男女がどっちかわからない存在ならなおさら。また保険適用などの権利も、事実婚が結婚と同等と認められれば、同性カップルにもその権利が適用される可能性があります。LGBTの問題は男女問題と決して無関係ではなく、その延長線上にあります。男女格差が縮まり女性の権利が高まれば、LGBT権利も高まってくるのではないでしょうか。

プロフィール
川島 洋(真奈美) 社会心理学者、大月短期大学兼任講師、ESPミュージカルアカデミー講師、ギタリスト。研究領域は青年心理・ポピュラー音楽研究。共著に『常識力を問いなおす24の視点―時代をとらえる手がかりを得るために』など。

取材・文・撮影/山中一生