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木下斉×古田大輔×日野昌暢『地方最強都市・福岡の勢いに学ぶ、これからのローカル都市活性の鍵とは?』

April 6, 2018

 地方都市の活性化がめまぐるしい昨今、そのお手本ともいうべき成長を遂げる福岡市の魅力に迫るトークショー『地方最強都市・福岡の勢いに学ぶ、これからのローカル都市活性の鍵とは?』が、3月29日に下北沢の本屋B&Bで開催された。

 このイベントは、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事を務める木下斉氏の著書『福岡市が地方最強の都市になった理由』(PHP研究所)の刊行を記念して開催されたもの。木下氏の他に、『BuzzFeed JAPAN』創刊編集長の古田大輔氏と、ニュースサイト「#FUKUOKA(福岡市)」や「絶メシリスト(高崎市)」などで地方活性プロモーションを手がける博報堂ケトルの日野昌暢氏という共に福岡市出身の2名を迎え、クロストーク形式で行われた。

 木下氏は福岡市の注目度について「ここ10 年くらいで、福岡市の名前が他都市で挙がる機会が凄く増えています」と、その現状を語る。古田氏もシンガポールに赴任当時、現地の起業家や投資家から、地元・福岡の名前が出てくることが多くてうれしい反面、驚いていたとか。

「話題だけでなく、各都市が提出するレポートに、比較する対象都市として福岡市が多く出てくるようになっています。以前は他都市だったものも、今は福岡市ですね。実際に人口伸び率や市民満足度、大学集積度などを見ていくと、今現在、地方最強都市と言えると思い、その秘密を探るため本を書きました」(木下氏)

 日野氏は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが調査した『市民のプライド・ランキング』で、福岡市がダントツで1位になったことを指摘。自身も含め、こうした地元愛の高さや地元民のポジティブな思考も魅力のひとつと分析する。

 その後、地方行政の在り方や官民一体となる都市経営の視点などが語られるなか、日野氏が木下氏の新刊の序文の一節を取り上げた。

"まちづくりとはどこかの「真似をする」のではなく、これまでの「常識を疑う」ことである。地域活性の分野では、正しいと言われている「思い込み=常識」の打ち手によって、まちを衰退させてしまうことがあります。一方で発展するまちは、その「常識」にとらわれず、自分たちで戦略を考え、覚悟を持って行動しています。 それが、福岡市の姿です。"
(『福岡市が地方最強の都市になった理由』より)

 このキーワードで出てくる"常識破り"という点において、木下氏はその具体的な手法のひとつに"素早い撤退"を挙げている。

「1970年代には全国の他都市同様に工業誘致を掲げましたが、近隣に魅力的な工業集積地があり、福岡市は失敗をします。そのとき、地元の西日本新聞主導で専門家検討会や公開市民シンポジウムが開かれ、福岡市長自ら、その内容を踏まえて抜本的な方向転換を行いました。そうして官民でサービス産業の集積、九州全域における中枢都市を目指した結果、地方有数のサービス産業特化型都市となりました。そもそも民間からの提言をもとに市が方針を180度転換するなんて異例なことです。市民が文句を言うだけでなく、自分たちで代替案を示し方向転換したのは凄いことですし、今思えば先見の明がある判断だと思います」(木下氏)

■日本はもっとライフスタイル産業を充実させるべき

 イベントは後半までクロストークが白熱し、古田氏と日野氏は地方からの情報発信の重要性にも言及。特に古田氏は海外のメディア事例をあげつつ「日本のメディアは東京に集中している。地方都市の中で条件に恵まれ、スタートアップ企業が増えている福岡だからこそ、そこに焦点を当てた新しいメディアに出てきて欲しい」と主張する。

 そして終盤の質疑応答コーナーでは、来場者から福岡市民特有の楽観性と危機感の無さに対してどう思いますか?という質問も。これに対し、木下氏も今の福岡市に対して警鐘を鳴らす。

「今後の九州の生産年齢人口の減少など、都市圏全域では実は厳しい状況。そして九州の中枢都市・福岡市こそ、その煽りを受けます。これは、多くの地方都市が抱える問題でもありますが、そこで"マシな状態"にある福岡市が乗り越えなくては...。今の福岡市は先人たちが作ってくれた需要構造で食べているわけで、今こそ、これから50年後のことを本気で考えて新たな需要を作り出す必要があります。そもそも日本からは福岡市が東アジアに近くても、アジア全域で見て、福岡市でなければならない理由もないんです。とはいえ、今の上手くいっている福岡ではそこまでの危機感は共有されにくいのも確かでしょうね。そこそこ満足する状況こそ、福岡市の危機だとも思います。山高ければ谷深し。でも、かつての地方最強都市・神戸市や北九州市の苦境を見れば危機感は持てるものと思います」(木下氏)

 しかし最後には福岡の未来への期待を込めて、「今、ヨーロッパの地方都市で成長しているのはライフスタイル産業です」と前置きし、独自のローカル都市活性案を語ってくれた。

「ライフスタイル産業は、余暇を楽しむ人たちに都市部から少し足を伸ばし、自然などを活かして遊んでもらうアクティビティ、さらに、それに必要なアイテムを製造するメーカーから流通までをも統合するような産業です。たとえばサーフィンで楽しむだけでなく、サーフボードやアパレルなどの独自ブランドが続々と立ち上がることが必要です。サービス産業に強い福岡市だからこそ、都市部で飲むだけでなく、九州全域を活用した"遊ぶことを極める"産業の開発も、成長戦略のひとつとして位置付け、かつて捨てた製造業も新しい形で取り込んでほしいと思います。アジアとビジネスで競争するのではなく、"遊び"で競争する。福岡市民に持ち前の"ネアカさ"があれば、必ずやできると思います」(木下氏)

 さらにこうした木下氏の提案は、九州や福岡やだけでなく全国各地の地方都市にも応用できるはず。これからのローカル都市活性の鍵は、やはり常識に囚われない柔軟な思考や斬新な戦略、それを遂行する地元民たちの覚悟が重要になりそうだ。

■本屋B&B
http://bookandbeer.com/event/20180329_bt/