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藤本智士×指出一正×日野昌暢『「編集」がローカルの情報発信を変える』

April 10, 2018

 昨年の夏に発売され、全国の書店で話題となっている書籍『魔法をかける編集(しごとのわ)』(インプレス)。その著者となる藤本智士氏を迎え、下北沢の本屋B&Bで、トークイベント『「編集」がローカルの情報発信を変える』が、4月4日に開催された。

 藤本氏はこの書籍の出版にあたり、全国62箇所・40都道府県で刊行イベントを行う精力的なプロモーションを展開し、2500人以上を動員。今回のトークイベントは、そうした刊行ツアーの終了記念も兼ねた企画で、月刊『ソトコト』編集長の指出一正氏と、ニュースサイト「#FUKUOKA」や「絶メシリスト」などで地方活性プロモーションを手がける博報堂ケトルの日野昌暢氏も藤本氏と共に登壇した。

 そもそもここで語られる編集とは、文章だけに止まらない、モノ・街・人などまで編集対象とするような広義の意味での編集なのだが、トーク前半は、藤本氏の著書に出てくる"編集の魔法"という言葉について。藤本氏はそのひとつを「ローカルの濃い人間関係に入り込んで果たせる、余所者(編集者)ならではの役割」だと言う。

 それに対し、指出氏も「僕が日本の地域から呼ばれるのも、ほとんどそういう役割ですね」と同調する。

「例えば、"寅さん"みたいな旅人がその地域の人間関係のタブーを犯したりして掻き回しまくるけど、結果として、凝り固まった関係が少し柔らかくなる...みたいな。僕は寅さんとは全然違うタイプだけど(笑)。でもそういうことはよくあります」(指出氏)

 つまり人と人を繋ぎ、人間関係を再構築するきっかけを作ることで、新しい何かを生み出すのも編集力が持つ魔法のひとつなのだ。その上で、藤本氏は自身を引き合いに、編集者としての立ち位置や距離感についても説く。

「編集者はある意味、ドライじゃないとダメだと思います。矛盾した言い方になりますが、僕のスタンスは"誠実に軽薄"なんです。それは、軽薄に生きることに対して誠実であろうってこと。次から次に新しい人に出会うから、それぞれに対して編集力を発揮していくにはそうする必要があるんです」(藤本氏)

■編集の魔法が繋ぐ、今後の地方メディアの在り方

 後半は刊行イベントを通して全国を回ってきた藤本氏が感じた、地方都市の現状と情報発信の話題に。「まず、当たり前だけど、都会と地方で考え方に差があることを再確認できた」と藤本氏。

「僕はローカルの地元紙や地方紙が大好きなんですけど、実際に地方に行けば行くほど、地元の人たちは大手の新聞は読んでいません。それでもテレビなどのマスメディアから流れてくる情報は、地元紙や地方紙にあるような論調はなく、大手新聞に依ったものばかり。各地を回ることで、そのズレみたいなものや、なんとなく感じていた違和感みたいなものを改めて実感できました」(藤本氏)

 日野氏も、自身が手掛けるローカルメディア分析として「僕がプロデュースする福岡の情報サイトは域外の人が見て面白いと思ってもらえるような編集を心がけていますが、PVはそこまで多くないけど、シェア数は凄く大きい。ここまでシェアされるっていうことは、地元の人たちが本当に言いたいことや伝えたいことが、これまでのネットにはなかったということではないか」と語る。そして、そんな実情だからこそ、ローカルからの情報発信が必要だと続ける。

 さらに情報発信に関して、成熟した仕組みが出来上がってしまっていないローカルにこそ、未来を変える大きな可能性があるのでは...という藤本氏は、ケーブルテレビとネットメディアの親和性を例に挙げた。

「今は地方テレビ局もキー局の番組がメインで、自社制作の番組に力を入れているのはケーブルテレビくらいなんです。僕は今、秋田ケーブルテレビと一緒に番組を作っていますが、それは秋田市でしか視聴できません。でも、YouTubeやVimeoに上げることで、twitterなどを介して楽しんでくれる人が全国に増えているんですよ。つまりケーブルテレビでネットメディアのコンテンツを作り、マネタイズしていく。そういう新しいビジネスモデルの実験みたいなことを秋田でやっています」(藤本氏)

 地方創生のカギのひとつ、ローカルの情報発信には、今後はケーブルテレビとネットメディアを繋ぐような、新しい"編集"(魔法)が求められているのかもしれない。


■本屋B&B
http://bookandbeer.com/event/20180404_bt/