TOPICS

田中輝美×鯨本あつこ×日野昌暢『縮小ニッポンを救う、地域活性の新キーワード「関係人口」の話』

May 31, 2018

 下北沢の本屋B&Bで、地方活性をテーマにしたトークイベントの第3弾が5月27日(日)に開催された。

 今回は『関係人口をつくる』(木楽舎)の著者で、ローカルジャーナリストの田中輝美氏と、離島専門ウェブメディア「離島経済新聞」の編集長を務める鯨本あつこ氏が登場。第1弾から司会進行を担当し、自らもニュースサイト「#FUKUOKA」や「絶メシリスト」などで地方活性プロモーションを手がける博報堂ケトルの日野昌暢氏と共に、三者三様それぞれの視点で地方活性について語り合った。

 まずはイベントのキーワードとなる"関係人口"について。これは特定の地域に興味をもち、積極的に関係してくれる人たちを示す造語で、定住人口とも交流人口とも違う、地域活性化の隆興を測る新しい目安として、国や行政も注目している。

 従来の地方行政では定住・移住施策につい重きを置きがちだが、その本質を「その土地に住んでいなくても、一緒に地域を作ってくれる"仲間"だと思っています」と、田中氏。そして地域のイベントを例に、「そこに遊びに来ておもてなしされる側の人が交流人口。一方、前日から一緒に準備をしてくれる人が関係人口で、そのイベントを作る仲間として、地域の人たちと対等な関係であることが大切だという考え方ですね」と語った。

 さらに、そこには心の問題も大きく関わってくると指摘する。

「地域の活性化や再生とは、つまり、そこに住んでいる人々の心の再生だと思うんですよ。それで、関係人口のいいところは住んでいる人たちが笑顔になることなんです。外から訪れた若い人たちがその地域のことを一生懸命に考えてくれる。その姿を見せることで、地元の人たちもがんばろうって気持ちになれるし、元気になるんですね」(田中氏)

■拠り所になる地域に出会うことで、心が楽になることもある

 地元愛とも少し違う、関係人口が生み出す地域愛は、誰でも共有できるフラットな価値観。離島の事情に詳しい鯨本氏も、独自の目線で地域愛に共感する。

「離島に住んでいる人たちは、すごく愛着や親しみを込めて"島(シマ)"という言葉を使います。まるで愛する奥さんの名前を呼ぶみたいに(笑)。そういう人たちと接してきて感じるのは、"拠り所としての地域"を持っている人たちは幸せそうだなってこと。でもそれは島のことが好きになった外部の人たちも共有できると思うんですよ」(鯨本氏)

 関係人口とは、地域の人たちにとってのメリットだけでなく、関わる側の人にとってもプラスになる概念のようだ。

「今まで拠り所がなかった人たちが、拠り所としての地域と出会うことで心が楽になることもあると思います。関わる側の人も、単純なボランティアとして地域に消費されるのではなく、両者にとってWin-Winの関わり方を築けるのが理想ですよね」(田中氏)

 そしてイベント終盤には"関わりの継続性"がテーマに。「最初に関わった人が、ずっとその地域と関わり続けられるとは限らないし、離れていくケースも多数発生すると思います。そうした継続性に関して、どう思いますか?」と質問する日野氏。それに対し、田中氏が新しい価値観を示してくれた。

「そもそも私は、"継続しなくてはならない"という価値観を越えていくことが大事だと思っています。大事なのは"その地域での役割"。だから役割が終われば、しばらく関わらなくなるのは当然だし、でもまたいつか必要になるときがあるかもしれない。あるいは、同じ役割を果たしてくれる、別の人が現れるかもしれない。無理をして関係性を持続させなくてもいいんじゃないでしょうか。でも、その分、気持ちの繋がりは大切にしていきたいですよね」(田中氏)

 人口減少と地方活性を課題とする現代の日本で、地域との新しい関わり方を示す"関係人口"いう価値観は、これからの地域活性化の重要なファクターになることは間違いない。こんな時代だからこそ、私たちには"気持ちの繋がり"が必要なのだ。

■本屋B&B
http://bookandbeer.com/event/20180527b_bt/